今回は雑談やコミュニケーション会話を有する接客においての会話術のまとめです。
会話、接客の手法においては自身の飲食店経営の経験からいろいろと書き連ねてきましたが、今回は『結局これが基本』という、会話の基本のまとめを解説します。
私はいつも飲食店関係者さん向けに経営論をあれやこれやと解説していますが、飲食店関係の方ではなくても、人間関係の構築にお役に立てる内容になっております。
人は自分の話をすると快感を得る生き物だということを覚えておく。
私は度々言うのですが、人って自分の話をすることに快感を得る生き物なんです。
これは、話すという行為で脳から報酬系のホルモンが分泌されるためで、お金をもらったときと同じくらいの悦びや満足感をもたらしてくれるのです。
ちなみに自分の話というのは、自身についての話だけでなく自分が発する話全てです。
ようするに、自分が喋っているときが気持ち良い、ということですね。
そして、快感を得られる場所にはまた足を運びたくなるのが人の常です。
まずこの基本を忘れずにいてください。この認識があるだけでもコミュニケーションを要する接客には有利です。
そしてもう1つの側面を覗くと『人は他人の話には大して興味がない』という切ない事実もあります。
いや、『一番興味があるのは自分自身だから、他人のことは二の次』と言ったほうが正しいでしょうか。
ですから雑談やコミュニケーションの場においては、
他人の話にさほど興味がない人たちに向けて
自分の話を一生懸命している…
という、実は一方通行にも近い、なんとも不毛なやりとりがそこらじゅうで繰り広げられているのです。
興味があるのは自分。他人の話には大して興味がない。

うちのお客様同士が実際にしていた会話です。
一番興味があるのは自分、他人の話には大して興味がない、ということが非常にわかりやすく表れているので紹介しますね。
「このあいだ出張先で、人だかりができてたから見に行ったら芸人○○がロケやっててさ~」と1人のお客様が言います。
そんな他愛もない話題にお連れ様たちが口々にこう言います。
「僕も前に、新幹線で役者○○と同じ車両になったことがあって~」
「えー、私、歌手の○○と地元が一緒なんだけど~」
わかりますか?
最初のお客様の話にレスポンスするというよりは、“有名人” から想起されたエピソードを各々が思い思いに口走っている様子です。
世間話程度の会話では本当によく見られる光景です。
こうなってくると本題に戻れなくなる可能性が高まるんですよね。言い出したお客様は自分の話を横から掻っさらわれた状態ですので、ちょっとモヤモヤしているかもしれません。
とにかくこれが、他人に対して自分以上の興味を持てない、という表れです。
もちろん他人の話に興味を持つ場合もあります。
それは、自分にとって有益な話や、好意を持つ相手の話です。
しかし、どんなに相手の話に興味を抱いて聞き入っている人でも、結局は自分のターンがくれば自分の話に気持ち良さを感じるわけです。
ならばやはりお客様がたくさん喋れるよう会話を引き出したほうが得策と言えますよね。
会話のタブーについてはこちらの記事を参考になさってください。
それダメ!嫌われる3つの「NG会話」意外とやってる逆効果コミュニケーション会話。接客
賢い人は、相手の話の引き出し方が上手。
賢い人ほど、相手の話の引き出し方が上手です。
なぜかと言うと、人の話を引き出すには非常に頭を使うからです。
脳はエネルギーを大量に消費する器官なので、できるだけ省エネをしようとしています。
どう省エネするのか簡単に言うと、『ラク』をしようとするんですよ。
集中が続かなかったり、長い言葉より短い言葉を好んだりするのもそのためですね。
・ラクな会話=自分の話をする
・頭を使う会話=相手の話を引き出す
人の話を引き出しながら会話をするには、情報処理能力や語彙力、間合いや気転も必要です。
自分の思い思いに喋るより何倍も、会話力の手腕が問われることになります。
なのでこれが自然にできる人は本当に賢い人だと思います。でもそんな人、実はそうそういるものではありません。
ちなみに私は自然にではなく意識的にこれをやります。ただ、技術半ばなもので相手によっては悪戦苦闘もしますし、接客中はいつも頭フル回転です。
比べるとやはり自分の話をしていたほうが圧倒的にラクですよ。
私は幸い、傾聴を少しばかり学んだことがあるのでそれをベースになんとかやっていますが。
ちなみに傾聴とは、FBIネゴシエーターが犯人に交渉するときの会話術としても有名です。
評価や否定なしに相手の言葉を聞き、なぜそう考えるのか背景を肯定的関心を持って引き出す会話の技術です。
カウンセリングやコーチングに携わる人は必ずと言っていいほど学びますし、今ではビジネスにおいてもセミナーやトレーニングを取り入れている企業は珍しくありません。
そんなプロフェッショナルじゃなくても良いのですが、日常のコミュニケーションにおける傾聴技術がわかりやすく解説されている本がありますので参考までに紹介しておきますね。
さて、先ほどの有名人に会った会話の件にちょっと戻ります。
言いだしっぺのお客様を気持ち良くさせるレスポンスとはどんなものだと思いますか?
こんな感じです。
「近くで見たんですか!実物はどんな感じでした?」
「なんの番組ですかね?他にも有名人いましたか?」
など、そのエピソードに興味を示し、それもっと教えて!的なレスポンス。
そうするとお客様も
「意外と背が高かったよ」
「旅番組っぽい感じだったな。アイドルみたいな子と歩いてて~」
などと心置きなく喋ってくれます。
何気ない会話だけどお客様は自分の話に興味を持ってもらっていることを感じ、喋ってはまた快感を得て、さらにはそうやって興味を持ってくれる人に好感すら抱きます。
お客様にとって大変気持ちの良い時間です。
こうやって快感という報酬を得られた物事や場所についてはしっかり記憶され、また来たくなるのです。
接客においては他のお客様の兼ね合いやこちら側の忙しさにもよりますが、可能な限りはお客様のその話題が完結するまで寄り添えればベストですね。

優れた会話力とは『足す力』ではなく『引く力』
SNSで、非常にわかりやすくまとめられていた格言を見つけましたのでそれも紹介したいと思います。
正しいことを言う人よりも否定しない人
アドバイスをする人よりも余計な一言を言わない人
話題豊富でじょう舌な人よりも話しの腰を折らない人
気遣える人よりも頼まれていない世話をしない人
口がうまい人よりも聞かれていない自分の話をしない人
足す力ではなく引く力
そうなのです。コミュニケーションの構築というシーンには、正論やアドバイス、気付きを与えるなどの足す力は不要なのです。
私が常々書き連ねていることを、見事なまでにまとめてくれたような格言です。
結局、多くの人が間違った認識を持っているんですよね。
× 面白い話や的確なアドバイスで相手に好印象を持ってもらう
◎ 相手を気持ちよくさせることが何より好印象を持ってもらえる
ということなのに。
【最後に】面白い話は必要か?
お客様を楽しませようとすると、なにか面白い事、うまい事を言わなければ…と考えがちですが、楽しませようと思うならまず、前述までの基本を実行するべきです。
ジョークやボケツッコミ、面白ネタなどで笑わせることができれば確かにポイントが高いですが、やはりセンスを要しますし、好みや笑いのツボは人それぞれなので万人ウケこそ難しいところなんですよね。
私が時々行く居酒屋さんに高田純次さんみたいにテキトーなこと言っていつも笑わせてくれるマスターがいるんですけど、私の友人は「中身がなさすぎて面白くない」と言います。笑
面白いっぽいことを押し付けて愛想笑いをさせてしまうことも、ウケを狙ったのにスベったなんてことも、そこらじゅうで起きています。
笑いのツボがみんな違うために起こることですね。
余談ですが、良い教材としておすすめしたいのは明石家さんまさんです。
とはいえ、さんまさんみたいに面白くなれってハードルの高い話ではありません。
お笑い怪獣と称されるタレントの明石家さんまさん。あの方のMCぶりをよく観察してみてください。
さんまさんはとてもお喋りなイメージがありますが、よく見ているとMCを勤める番組では実はそんなに喋っていないんですよ。
喋っているのはほとんどがゲスト。
そのゲストの話を「ほんでほんで?」「うんうん」「ほんまかいなー!」「で、どうなったん?」と軽快にエピソードを引き出し、短くわかりやすいボケとツッコミ、豪快な笑い方で、どんなゲストのどんな話にも色をつけて盛り上げているのです。
番組の大半はゲストが喋っているはずなのに、さんまさんのトークショーを見せられた気分になるほどです。
その神業とも言える会話の引き出し方や盛り上げ方は大変参考になります。
とはいえ突然、さんまさんみたいになろうたってそうはいきません。
しかし少しでも近づくために、彼の言葉やリアクションを真似してみるという手はあります。
心理学的にも有効とされている “真似をすることでその人に近づける成就法” を紹介した記事です。よろしかったら参考になさってください。
「私、変わりたい!」なりたい人物の真似をする成就法【不倫妻になりきった女の実話】
他にも会話術に関わるこんな記事を書いています。
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