飲食店として「常連客」は多ければ多いほど良いに決まっている、ありがたい存在。
しかし時には問題になることもあって、それは一見さんやリピーターさんに「この店、常連がうざい」と思われてしまうこと。
今回のお話は、そんなありがたいはずの存在が
お店側の対応次第でお店を潰す存在にもなる得る…というお話。
そうならないように日頃からやるべき3つの対策も含めて解説していきます。
新しい常連客が “客よけ” になってしまった話

とあるカウンターバーの話から聞いてください。
そこは十数席のカウンターのみのお店で、スタッフはママさんとバイトの女の子が通常2人ほど。
ママさんはきれいな人で付き合いも良く、実業団スポーツチームの活動やコンペなどにも積極的に参加したりして、その関係のお客さんもよく来ていたお店でした。
おそらくそんな活動を通じて知り合ったであろう一人の男性客がそのバーを(いや、多分ママさんを)気に入って頻繁に来店するようになりました。
最低でも2日に1回のペース、また、その男性客の仕事関係の人やお友達も来るようになり、誕生日会や打ち上げなどのイベントもそのバーを使い、連日のように満席、大盛況でした。
しかしそうなると必然と他のお客様を断わることも多くなっていきます。ママさんもその都度、申し訳なさそうにしていました。
その男性客ご一行は、ちょっと派手めな業界の人たちだったんですよね。そのせいか、ご一行がガヤガヤと来店すると、他のお客様は「明日早いから~」とか言いつつそそくさと帰ってしまう事も度々ありました。
でもなぜかその男性客ご一行は、3ヶ月も経たないうちにパタリと来なくなったんです。まぁ大方、ママさんと何かあったんだろうなとオトナの事情を察します。
で、ここから180℃逆の静かな日々が始まるわけです。
以前から来てくれていた常連さんたちが、なかなか前と同じようには来てくれないんですよ。
数回断られたり、以前のように心地よく飲めなくなってしまったことで、他のお店に移ってしまったり、足が遠のいてしまったのでしょうね。
ちょっとした事件が起こった後のような空気感。
これは後々知ることになるのですが「今日もいっぱいだね。また来るよ!」と他のお店に流れていった常連さんたちは、だいぶグチっていたようです。
自分たちの開拓地に侵略軍がやってきて追放されてしまった、くらいの言い振りだったとか。
こ、こわい…
ただ、ママさんの活発な営業活動のおかげか、徐々に回復していってそれほど長く尾を引くことなく、また賑やかに営業されていました。
常連客しかいない店はつぶれる?
前述のバーは、潰れるまでには至りませんでしたが、一時、危機的な客離れが起きたのは事実です。
以前、とあるコンサルタントの記事で “ お客様の7割が常連客の店はつぶれる ” という記述を見たことがあります。
正直、その数値には、うーん?って感じです。常連客の頻度の定義がなく非常にあいまいな上に、繁華街、ビジネス街、郊外などの地域性によっても利用する客層が全然違うからです。
ただ、その記述の理論は必ずしもハズれていない、といった点もあります。
常連客ばかりで順調に経営できている店はいくらでもあります。
何が問題なのかというと、それがいつも同じような団体、同じような顔ぶれになってきたら黄色信号だということです。
同じような顔ぶれ、同じような団体の常連客に偏る時期ってあるんですよ、誰にでもマイブームはありますから。
うちもあります。
確かに、自分のお店を好んで通ってくれる常連客で連日賑わうと、自分のお店は人を呼ぶ魅力があるんだと自信がついちゃうんですよね。根拠もないのに、目の前の賑わいになぜか安定を感じてしまう…。
でも断言します。
その常連客たちは、ずっと同じペースでこの先も来つづけてはくれません。
常連客が来なくなる理由についての記事はこちらから「あの常連さん最近見ないなぁ」来なくなった常連さん。何故その常連客は来なくなったのか?

同じ常連客で満足している店が危険なんです
同じような顔ぶれ、同じような団体、そうなってくると他のお客様は当然ながら入りにくくなります。心地よく飲食したいだけなのに、転校生みたいなアウェイ感は誰だって味わいたくないですから。
そして前述のとおり、今よく来てくれている常連客たちはやがて減っていきます。
となれば、新規客の獲得ができなければお客様は減っていく一方で、あとはもう時間の問題ということになります。
開業して1~2年経てばある程度、常連客がつきます。
『常連=固定客』『固定客=安定』と、捉えてしまうと新規客の獲得を疎かにしてしまう、これが現在の飲食店の三年生存率の低さを助長している原因の一つと考えます。
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常連客で賑わってもやり続けなきゃいけないこと

常連さんは本当に大切な存在です。
でも、お店の安定をもたらす存在として見てはいけません。
同じような顔ぶれ、同じような団体に偏ってしまうことがいくら黄色信号とは言っても、気に入って足を運んでくれている以上、店側としてもお客様を選ぶことも拒否もできません。
ですからなおさら、お店側のこんな3つ対応が重要になってくるのです。
1、常連客の特別扱いはせず、日頃から平等感を示す。
たくさん通ってくれている分、感謝の気持ちも増しますから、特別な施しをしたいのは良くわかります。
でもやっぱりそれは新規客には関係ないんです。
なんなら、心地よく飲食してお金を払うという一連の行動に、新旧・上下差をつけられてはたまりません。
ですから日頃から常連さんたちにも、そういう平等感のスタンスを示しておく。
もちろん常連さんに感謝の気持ちのおもてなしをするのはいいんですよ。
でも他のお客様に見せないようにやるべきかな、と考えます。
そもそもその常連さんへの感謝の気持は、その常連さんにだけ伝わればいいものなのですから。
2、お客様の取り逃しは最小限に。可能な限りのフォローを。
例えばお店が満席のタイミングに、足を運んでくれた新たなお客様をお断りせざるを得ないときも、次はなんとかそのお客様を獲得できるよう可能な限りのフォローを講じます。
例えば、(大きな声では言えませんがぶっちゃけパフォーマンスだけでも)どうにか席を詰めて受け入れようとするウェルカムな姿勢を見せます。
時には、中のお客様から「こっち詰めるよー」「ここ空けるよ!」と協力してくれることもあります。(これがあるとかなり好印象◎)
もしくは「あと20分くらいでお席が空く予定なんですけど…」と、もうちょっとで入れますアピールをしたり。
なんだかんだ「いいですいいです、また来ます」となるパターンが多いですが、できる限り丁寧にお見送りします。
お断りしてしまったお客様に次回使える割引券などを渡したり、
「次回は優先的に良いお席をお取りしますのでお気軽にお電話ください」とお店の名刺など渡したり、
再訪問の際に「先日はせっかくいらして頂いたのにすみません、これよろしかったら…」と何かサービスで一品を出したり、
ただお断りするだけで済まさない、プラスαのアフターフォローが後に活きます。
3、常なる集客活動
常に新しいお客様を呼び続ける集客活動は必要不可欠です。
常にウェルカム態勢でいることをアピールしておきます。
近年の飲食店の廃業率の高さは、開業率の高さを上回ります。
飲食店は常に飽和状態にあります。どこかのお店が潰れても他にお店はいくらでもありますからお客様は大して困りません。
こんな時代に集客活動なしでどこからともなくお客様が沸いてくるようなお店などないのです。
きれいな店、美味しい料理、行き届いた接客、どんなに非の打ち所のない店であっても、いずれ飽きがきて他に新鮮さを求めるようになるのが人というものです。
飽きだけじゃなく、些細な出来事や環境の変化も誰にだって絶え間なく訪れます。
これは星をもらった店でも、近隣住民しか知らない定食屋でも、新規店でも老舗でも、みんな同じ条件です。
今の常連さんがいるのもかつての集客活動の成果。
これから出会うお客様は今の集客活動の成果。
せっかく気に入ってきてくれる常連さんを「うざい」なんて他のお客様に思わせないよう、お店側もしっかり対応していきましょう。
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