ほとんどの人がスマホを持ち、気になったものは即時に画像におさめることができる時代。
美味しいものや映えるものを写真や動画で撮影したり、また、カフェやレストランでそのような人の姿を見かけるのも日常的な風景となりました。
私自身、飲食店経営者ですが、他の飲食店関係者とも時々話題になるのが『勝手に写真や動画の撮影をするお客様について』です。
実は、料理や店内の様子を撮影するお客様の行為を快く思えない飲食店経営者や料理人は少なくありません。
ならば『撮影禁止』とはっきり書いておけばいいじゃないか、とも言えますが、お客様にいちいちルールを課すのはお店としてはイメージダウンに繋がりかねないので、禁止事項はできるだけ置きたくないのも本音です。
今回は、お客様による飲食店での写真や動画撮影という行為について、法的観点と飲食店側の見解について解説していきます。
許可なしに撮影しても法律の観点からはおおよそ問題ない
弁護士さんのお話によると、飲食店で自分が頼んだ料理の写真や動画を撮ること自体は、法律上、おおよそ問題にはならないとのことです。
ただし、立ち入り禁止エリア、他の人物の無断撮影、お店の営業を妨害してしまうような撮影行為は、当然ながら法に触れる可能性があり、注意が必要です。
また『撮影禁止』と明確に掲げているお店で撮影をした場合も、一部を除き、無断撮影という行為を法で裁くことは難しいようです。
一部というのは例えば、著作物性(創作性・芸術性)が高い商品、または実際に行った人にしか経験できない特別感や高級感を醸しだしているサービスなど、外部に漏れてしまっては価値が下がったり、模倣を阻止したいもののことですね。
これらを無断撮影したとなると違法となる可能性もあるそうなのでここも覚えておきたいところです。
撮影は違法でなくてもトラブルを起こす可能性もある
飲食店という性質上、お客様が料理の写真を撮られることはほとんどの経営者が織り込み済みだと思います。
なんなら宣伝にもなるし、撮影に肯定的な飲食店もたくさんあると思います。
私のお店でも料理にスマホを向けているお客様はよく見かけますし、それくらいなら私もなんとも思いません。
しかし、なりふり構わずカシャカシャと撮影されるのを不快に思う経営者や料理人が少なくないのも事実です。
私のお店は店内から外の様子が少し見えるのですが、スマホをこちらに向けたまま(おそらく動画撮影)で近づいてきて入店され、注文を待つ間もメニューや内観、通路やトイレまで写真や動画らしき撮影をしているとおぼしき行動を時々見かけます。
正直言えばこれは「嫌です」
やはり第一に、他のお客様やスタッフが映り込む可能性が高いことに危機感を持っているからですね。
誰だって赤の他人のスマホに自分の姿を残したくないし、SNSなどで世に放たれるのなんてなおさら勘弁です。不快以外なにものでもないでしょう。
実際、私のお店のことを書いたSNSやブログなどで、お客様やスタッフ、店舗前の通行人が写りこんでいる写真を見つけることもよくあります。
それが後ろ姿や遠目であって、一般の人には誰だかわからない状態であっても、知っている人には姿や持ち物などでわかってしまうケースはあります。
以前、同界隈の飲食店の開店レセプションに、うちのディナー部門の担当者が出席していたことが、面識のない別グループのSNSの写真の奥に写りこんでいたことで発覚したことがありました。笑
とはいえ、出席していたことは全く問題はなく、接客していた女性従業員に優しい笑顔を向けているショットで、周囲に「デレデレしてんな」とからかわれていたくらいでしたが。
仮にもし、映らないように撮影されていたとしても、スマホがこちらに向けられているように感じるだけでも気分が悪いものです。
これも私のお店で実際にあったことですが、カップル客が料理や自分たちの食べる姿をスマホで撮っていたところ、隣の席の別客が「(自分たちを写真に)入らないようにしてもらえます?」と物申したのです。
カップル客の1人が「いや、そちらを撮ってるんじゃないんで」と軽くあしらってしまったことで、ちょっとした口論になってしまい、私が間に入って、他のお客様のほうにスマホを向けずに撮影を楽しんで頂くようお願いして収めたことがありました。
事の多くは気遣いひとつで肯定的に受け入れてもらえる問題
私もよく外食をするので、写真を撮りたい料理に出会うことがあります。
その時は必ず「お料理の写真撮らせてもらってもいいですか?」とお店の方にお伺いします。
そう聞くとほとんどは「大丈夫ですよ」「他のお客様が写らないようにして頂ければ」と、わりと好意的に許可してくれる印象があります。
行きつけのお店でも、気心知れた仲間たちとでも、毎度「これSNS載せていい?」と聞いてから投稿します。
私も、自分のお店でお客様からそう言ってもらえれば、写真や動画を撮ってもらうことにもっと肯定的になれるからです。
無断撮影にいまいち肯定的になれないお店の多くは、なにが嫌なのかと言うと、なりふり構わず、周囲を気遣わず、勝手に撮影して勝手にネットで発信するという『自己中心的行為』なのだと思います。
ならば、何も言わずに撮るよりも、一言「動画を撮っても大丈夫ですか?」「SNSにあげてもいいですか?」と言う気遣いひとつで、同じ撮影という行為でも好印象を得られると思うのです。
もちろん、商品やお店の情報をむやみに漏らしたくない、というお店もあるので一概ではありませんが、気遣いを見せるだけで収まる問題は多々あるので、今後、飲食店で撮影されるときはそこを意識されてみるのも良いかと思います。
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