SNSなどで時々、大きな話題となる『使ったティッシュペーパーを食器の上に置く』行為。
これは、飲食店で食事した際、食べ終わった茶碗やどんぶりの中、グラスの中、お皿の上に、口を拭いたり鼻をかんだりしたティッシュが置かれた様子を店側が注意喚起のためにSNSに投稿しているものです。
もっと言うと、ティッシュだけではなく、薬の外装やガムの紙などもありケースはいろいろです。
私も飲食店を経営しており、自身のお店でも紙ナプキンをテーブルにセッティングしています。
やはりうちでも使用済みの紙ナプキンを空いた食器に置くお客様は時々います。
しかし、そもそも私はそれを『バッシング(飲食後の片付け)しやすいようにお客様がまとめてくれた』という感覚でいたので、これらがSNSでマナー違反として話題になったときは少し驚いたものです。
とはいえ私自身は外食したとき茶碗やグラスにティッシュを入れることはやりません。
…と思っていたのですが、先日、友人たちと回転寿司で食事したときに、使った紙おしぼりや割り箸の外袋、わさびの個包装を空いた寿司皿にまとめてたんですよ!みんなでごく自然に。
「意外とやっちゃってるじゃん私」と思いました。
で、友人たちにその話をしたんです。
そうしたら、
「鼻をかんだティッシュじゃないからいいんじゃない?」
「汁の残ったどんぶりなど汚れた食器じゃないんだから問題ない」
「じゃあ食器の上に使用済みの爪楊枝を置くのもダメなの?」
などとまた論争になるわけです。
こうなってくると、どんな状態なら良くてどんな状態ならダメなのかは個人の細かな感覚で、まとまるわけがないんですよね。
しかし空いた食器にゴミを置くという行為には変わりないので、もしかしたら店員さんは不快なのかも…と思い…、今回は飲食店側の見解とマナーの観点から結論づけていこうと思います。
飲食店側は、使ったティッシュをどうしてほしいのか?
空いた食器にティッシュなどのゴミを置くこの行為、飲食店側がどう思っているのかは結局のところお店のバッシング方法によって分かれるところだと思います。
それは店員さんがバッシングをしている様子を見ていればわかります。
バッシングの際、食器の上にゴミもひとまとめにしているようならおそらく何とも思わないでしょうし、食器とゴミを分けて片付けているようなら歓迎されない行為だと思います。
そして、もし近くにゴミ箱が設置されていれば『ゴミはここに捨ててください』というお店側のメッセージとして受け取ることもできます。
とはいえ、そんなバッシングの様子を確認してからゴミをどこに置くか決めるお客様もなかなかいないと思います。
結論、飲食店で使ったティッシュはどうするべきか?
結論としては、食器は食べ物をのせるものという観点から考えれば『食器の上にゴミ等は置かないほうが無難』と思っておいたほうがいいのでしょう。
空いた食器にゴミを置く行為と、テーブルにゴミを置く行為、どちらに不快感を抱くかを考えたときに前者の方がベクトルが強めだからです。
そして、その行為に嫌悪感を抱くのはなにもお店の人間だけではなく、例えば一緒に食事をした人や隣の席の人という可能性もあるからです。
そもそもマナーというのは周囲の人を不快にさせないよう考えられた行儀や作法のこと。
その点から見ても、これらの行為を不快に思う人がいるなら、できることは配慮してもいいのでは?と考えます。
使ったティッシュをどこに置くかでなぜこんな論争になるのか?
そもそも人はどうしてこのようなことで大きな論争を巻き起こすのでしょう。
これは人が人と一緒に生きていくために必要不可欠な『秩序』がキーポイントとなります。
そもそも秩序とは、対立、混乱、破綻などの懸念がなく安定を維持する状態を意味します。
秩序を乱されると集団の安全も乱される可能性があるので、人間は秩序から逸した行為をする者に嫌悪感が沸くようにできています。
これが裏切り者やはみだし者を検知する源になります。
芸能人の不倫なんてまさにそうですね。全くの他人事なのにあれだけ糾弾されるのは、不倫というものがこの秩序を逸した行為だからです。
そして「あなたは間違っている」と、相手に制裁を与えようとします。と共に『自分はみんなと共に秩序を守る人間だ』と示すことができ、群れの中で生きやすくなるのです。集団心理の原点でもありますね。
このティッシュ問題は大きなことではないのですが、誰もが想像しやすい大変身近な出来事であることから物申す人が多い(反応が大きい)のでしょう。
他にも同じようなことがあります。
『電車の中でメイクをする』
『居酒屋でドリンクは水しか頼まない』
『カフェなど公共の場で赤ちゃんの授乳(ケープなどで隠しながら)』
『職場でカップ焼きそばを食べる』
このように『少数の人が周囲や相手に気にせず行う行為』は異質的に捕らえられやすく、秩序や調和を守ろうとする多くの人の不快感をあおり、制裁行動を起こしてしまうのです。

個人的には、このような事をSNSで発信するのは問題提起として一定の理解はあるものの、それをやったお客様をまるで犯人のように『晒す』という投稿は、たとえ顔にモザイクをかけていたとしても、あまり賛成できません。
当たり前や常識の認識は大きくまとまっているものもありますが細かなところは人によってちがいます。
ですが、多くの人が自分が一般的だと思っている現実があります。
矛盾がありますよね。
これはフォールス・コンセンサス効果(偽の合意効果)と言って、自分の考えや行動は多数派と同じ『一般論』『常識』であると思い込む、バイアス(認知の偏り)なのです。
使ったティッシュを空いたお皿に置くのは非常識だという訴えに、賛同もあれば否定的意見も出てくる。
どちらの人も自分の考えが一般的だ、常識だ、と思っているのです。
ここで、『自分はやらないけどこの人はなぜそうするのか、誰のために、何のために、どうするべきか』と考えられるといいですね。
悪用厳禁!お客様を操る『ナッジ理論』を実例を踏まえ解説。飲食店経営におけるナッジ理論の活用法
SNSで見せしめや同調を集めることよりも、お客様がそうしないようなシステムなどを考えていくことが、お店作りには有利だと思うのです。
私は日頃、顧客心理から考えた飲食店経営についてあれこれと綴っています。
飲食店経営に携わる方ではなくてもお役に立てる記事を書いておりますのでよろしかったら参考になさってください。
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