今回は最初にざっくり言いますと、飲食店経営においてネガティブな人のほうが向いているのではないか?という話をしようと思います。
私事ですが、私の周りの飲食店経営者さんたちの性格を見ていると
①どちらかと言えばネガティブ
②ポジティブを装ったネガティブ
③なかなかネガティブ
の順番に、ネガティブ寄りな人たちが多いです。
その中で1人、超がつくほどのポジティブ経営者さんがいます。自他共に認めるプラス思考の持ち主です。
その経営者さんのスタンスはいつもこんな感じです。
「何事も挑戦!」
「考えていても仕方ない、とりあえず動く!」
「たいがいの事はなんとかなる!」
いつもエネルギッシュで明るく、存在感のある人です。
ところで、ポジティブって聞こえが大変良いものですよね。
積極的な行動力
肯定的・楽観的・プラスの思考
逆境にも強い
この言葉だけ見れば、飲食店経営者に限らず全ての経営者、いや、なんなら全ての人にとって理想的な性質と言ってもいいでしょう。
しかしこのピカピカとした性質には、裏側の顔 “デメリット” もあるのです。
それとは逆にネガティブは負の思考、負の感情が先立ちます。
しかしこのネガティブにも裏の顔 “メリット” があります。
今回はそんな、
不必要にも見えるネガティブな性質と日本人の切っても切れない関係性
飲食店経営者に有益なネガティブ成功術
について解説していきます。
そもそも日本人はネガティブな人が多い
さて、まず『ネガティブな人』と言うと
不安が強くチャレンジできない…
思ったことをハッキリ言えない…
悪い方向にばかり考える…
というような様子を想起しますよね。くよくよ、うじうじ、なんとも根暗なイメージ。
しかし実のところ、日本人はネガティブ思考の人がとても多い民族であることがわかっています。
もっと言えば、男性より女性のほうが多いとされています。
これは遺伝的要素が強く、俗に “幸せホルモン” と呼ばれる、“セロトニン” というホルモン作用に関連していると言われていますが、そこまで掘り下げると話が長くなるので今回は割愛します。
しかし遺伝ということならば、太古の昔からそれが生存戦略において有利であったため受け継がれてきた性質であるということも示しています。
ようするに私たちは、ネガティブを味方につけて生き抜いてきた人たちの子孫ということになります。
では、ネガティブを味方につけるとはどういうことかと言うと、例えば、
起こるかどうかわからないトラブルや災いへの不安に対して、
失敗しないように学びや備えを怠らず、慎重かつ丁寧に物事を運ぼうとします。それゆえに高い正確性や計画性、緻密(ちみつ)性が備えられてきました。
また、人間関係に敏感なので、人の目を気にしたり孤立することへの恐れに対して、秩序を守り、周囲に合わせて行動します。
異端的・感情的な言動は、群れ(集団)の中では支障となるため、空気を読み、本音はオブラートに包み、相手を嫌な気持ちにさせない協調的コミュニケーション方法を身につけてきました。
これは、移民が少ない島国でなおかつ災害が多いことから備わってきたと性質と考えられており、日本人独特の性質とも言えます。
女性のほうが多いとされるのは、子供を産み育てる役割において楽観的では子供を死なせてしまう可能性が高まるから、と言われていますね。
日本人はポジティブな人とは付き合いづらい?
ほとんどの人はポジティブとネガティブの両方を兼ね備えています。
その割合の偏りが大きいと『ポジティブな人』『ネガティブな人』と分別されます。
そんな中、ネガティブな人はポジティブに憧れるけど、ポジティブな人はネガティブに憧れないという、2つの性質に優劣がついてしまうような現象があります。
だからと言ってポジティブな人のほうが優位ということではないのです。
ポジティブな人が優れて見えるのは、『ポジティブの良い面』と『ネガティブの悪い面』だけが表面化される世の中の風潮のせいですね。
本当はどちらにもメリットとデメリットはあるというのに。
冒頭に登場したポジティブ経営者さんも、時々は投げやりになることがあるそうですが、翌朝には思考が転換されるのだそうです。ポジティブな人によくある『寝ると忘れる』ってやつですね。
しかし、彼のお店の従業員や常連さんたちはそのポジティブ経営者の欠点をこう言います。
「似たような失敗を繰り返す」
「気にしてほしい部分もプラスに捉えてしまう」
「大雑把、行き当たりばったり」
「(こっちが大丈夫じゃないのに)大丈夫大丈夫!と流される」
などと、ポジティブゆえの、いわゆる“弊害”を彼らは感じていたわけです。
そして、常連さんの一人がこう言ったのです。
「ポジティブな人というのは、人のことをあまり考えない自己中心的な人」って。笑
やや辛めの表現ではありますが、確かにその一面はあります。
自分以外の人のことをおもんぱかっていたら、切替えも決断もサクっとはいきませんからね。
さておき、ネガティブな人が多い日本では、ポジティブな人に対して、
『人生が豊かだろう』『仕事ができそう』などと前向きな姿を羨ましく思う一方で、実際にポジティブな人との関わりには戸惑いややりづらさなどの温度差を感じてしまう人が少なくないと考えます。
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ネガティブを『味方』につけた人が成功する
日本の名だたる経営者や著名人たちはみんな『ポジティブな先導者』のように見えるかもしれませんが、そんなことはないのです。
代表的なところではダイソーの矢野博丈社長、ユニクロの運営会社の柳井正社長、ホリプロの堀義貴社長が、ネガティブな思考から経営戦略を繰り広げてきたのは有名な話です。
もしお客様が気に入らなかったら…もし失敗したら…と沸きあがる不安に向き合い、あらゆる予測のもと徹底的に学び、備え、失敗しないもしくは失敗しても最小限のリスクで済む土台を作り上げてきたのです。
また、暑苦しいほどのポジティブキャラが売りの元テニスプレーヤー松岡修三さんも、実際は超ネガティブだと公言しており、ネガティブを味方につけて強くなる方法を紹介した著書も出されています。
こちらがその本です。参考までに置いておきますね。
ここでよくわかるのはネガティブな人、いや、ネガティブを味方につけた人が成就するということではないでしょうか。
さて、飲食店経営においては、お客様への対応、食品の取り扱い、衛生環境、お客様や従業員の安全など、精密に扱わなければならないことがたくさんあります。
これらは先を予測することによって対策を講じるものですよね。
そして日本人(お客様)は視点、感受性、表現方法など非常に細かく、評価基準が厳しめな面があります。
これに対応できる細やかなケアやおもてなしもお客様をおもんぱかるところから始まりますから、ネガティブな性質が発揮されるところだと考えます。
ただし、前述で「ポジティブな人というのは、人のことをあまり考えない自己中心的な人」という言葉を紹介しましたが、ネガティブすぎる人も自分の感情ばかりクローズアップして人のことを考えられずに終わりますので注意したいところです。
ネガティブな人にはネガティブを味方にした戦略があるということを忘れずに。
ネガティブを味方につける方法
ネガティブを味方につけることは意識的にできます。
①まずはネガティブな思考を素直に認めましょう。
ネガティブというと負のイメージが強いので、目を背けたり、ごまかしたりする人も多いと思います。また、ネガティブになっている時は惨めさや情けなさに襲われ、自分に嫌気がさしたりもします。
でもそこも含めてとことん向かい合うのです。
『知人の経営者が2店舗目を出店し応援するべきなのだが、とても焦り(イラつき、嫉妬)を感じている』
『接客ミスをSNSに書かれて動揺している。原因はこちらなのに書かれたことに腹が立ってしまう』
このように『自分が悪いのにイライラする』のような矛盾は誰にだって経験があると思いますが、そこを素直に認めるのです。
人間は矛盾する生き物なのですからそう感じてもそれは正常です。とにかく素直に認めることが大切です。
まずは事柄とネガティブになっていることを素直に認識できなければそれをメリットに変えることはできません。
また、嫌な記憶と感情が止め処もなく頭の中でグルグルしてしまうなら、紙に書き出してみることをおすすめします。
文字に起こすことは状況と感情の整理にとても有効な方法です。
何が嫌だったか、どう言えばよいか(よかったか)、どうするのが理想か、どこまでが許容範囲かなど、何でもいいので書き出してみましょう。
②できるだけ客観的に見てみましょう
私はいろんな記事で何度も書いてきましたが、自分を客観的観測すること、いわゆるメタ認知が重要なのです。①で少し整理できたものを客観的に見てみるのです。
これはあくまで私の方法ですが、自分の少し後ろから、ドラマ劇でも見るようなイメージです。
実際のドラマって、気分が高揚しながら見つつも、ストーリーや登場人物の感情を冷静に分析できるじゃないですか。他人事ですから。
「そこで素直になってれば丸くおさまるのに」とか
「いやいや、やるなら今でしょ!」など
ツッコミどころや解決策が見えたりもしますよね。
こんなふうに自分の状況を第三者の位置から視聴する感覚で分析するんです。
そうすると自分が抱えているトラブルなどについても
「傍から見れば自分ひとりでこじらせてるだけかも…」
「あの人も気持ちに余裕がないのかな…」
というように、主観だけのビジョンとはまたちがうビジョンが見えてくるのです。
客観的観測についてはこちらでも詳しく書いていますのでよろしかったら参考になさってください。
高い廃業率、やばい飲食業界。開業前に知ってほしい、収益を上げる飲食店経営者たちの特徴。
③無理にポジティブに考えようとない
もちろんポジティブ思考は大事ですよ。自然とそう転換できるなら問題ありません。
しかし本心に抵抗してポジティブに考えようとすると、余計にネガティブ感情が強くなることがあります。
強制的に前向きな言葉や理想論で自分に言い聞かせようとするのではなく、①のように本心を認め②のように客観的に見てみることが、無理せずに案を導く方法となります。
これら3つの方法で、自分の感情を切り離して物事の本質を捉えることにより、冷静に考えることができれば、自分が何をすべきかが見えてくると思います。
最後に言っておかなければならないのは、じゃあポジティブな人が飲食店経営に向かないかと言ったらそうではありません。
しかしそれはポジティブにまつわるデメリットを自覚しているかどうかが鍵となります。
例えば、
積極的な行動力は、行き当たりばったりになってしまうこともあります。
肯定的・楽観的・プラス的な思考は、備えや注意を怠ってしまう可能性もあります。
また人のこと考えるより自分の考えを優先することも多いので、周囲の人にポジティブの押し売りをしたり困惑させてしまったり、疲れさせてしまうなんてこともあるでしょう。
ポジティブは大変魅力的な性質でありながら、このようなデメリットの部分を認識できずにいると、ただの独りよがりになりかねないのです。
ネガティブ同様、メリットとデメリットが明らかであればフォローを講じることができるのですから。
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